国の特別天然記念物で絶滅の恐れがあるライチョウの生息数が激減していた南アルプスの北岳(山梨県・3193メートル)周辺で今夏、保護対策が実り、生息数が回復しつつあることがわかった。環境省の委託を受け、ケージ保護やテンなどの天敵駆除に取り組むライチョウ研究者の中村浩志・信州大名誉教授が明らかにした。
今年6~7月、中村さんは北岳周辺でライチョウの生息数調査をした。確認できたのは23のなわばり(オス、メスのつがい)で、生息数は58羽と推計。保護活動を始めた2015年の9なわばり、23羽から約2・5倍に増加していた。
南アルプスではライチョウの生息数が減少しており、中でも北岳周辺が顕著だ。初めて生息数調査をした1981年に63なわばりだったのが、2004年には19なわばりに激減。14年には9なわばりまで減り、絶滅の恐れも出てきた。
「いま対策を講じないと北岳周辺のライチョウは絶滅する」。15年、中村さんは環境省の保護対策事業として、山小屋近くにケージを設置して夜間に孵化(ふか)後のヒナと母鳥を保護する活動を始めた。天敵に襲われないよう、夜間だけライチョウ親子をケージに追い込む手法だ。
今年は3家族をケージで保護。…