米トランプ政権は27日、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉でメキシコとの二国間交渉が「予備的合意」に達したと発表した。自動車の関税撤廃の条件として、北米域内の部品をより多く使うよう求める「原産地規則」の見直しなどが柱。日系自動車メーカーなどのうち、北米での部品調達網を十分に築けていない企業には打撃となる。
多国間の通商協定を敵視してきたトランプ大統領は残る加盟国のカナダの排除を辞さない構えで、最終合意までには流動的な要素も残る。トランプ氏は27日、メキシコとの新たな合意について「両国の労働者と市民にとってすばらしい取引(ディール)だ」と記者団に強調。「合意を『米メキシコ通商協定』と呼び、NAFTAという名前はもうやめる」とも述べた。11月の中間選挙に向けて成果を訴えるため、一定の合意を急いだとみられる。
米政権が発表した「大筋の予備的合意」によると、自動車を関税ゼロで輸出入するのに必要な域内の部品調達率は従来の62・5%から75%に引き上げる。米国での生産を促すため、完成車の40~45%の部品を時給16ドル以上の労働者が作ることを求める規定も盛り込む。
トランプ氏は合意を発表した場で、メキシコのペニャニエト大統領と電話をつなぎ、会談内容をそのまま公開した。ペニャニエト氏は「お互いの理解の最終地点に達している」と述べつつ、「NAFTAの再交渉の当初から我々が求めてきたように、カナダを含む3国での合意を強く望んでいる」と念を押した。
ライトハイザー米通商代表は27日、メキシコとの協定締結の意思を8月末に米議会へ通知すると説明。米政権はカナダと交渉に入り、カナダと合意しない場合は米メキシコ間だけでの協定をめざす。
米金融市場は発表を好感し、大企業でつくるダウ工業株平均の終値は前週末比259・29ドル(1・01%)高い2万6049・64ドル。ただ、「詳細をよく検討したい。改善ではなく後退かもしれないとの懸念もある」(米主要業界団体)といった慎重な見方もある。(ワシントン=青山直篤)