韓国と北朝鮮による南北連絡事務所の開所が、9月以降にずれ込む見通しになった。韓国政府は今月中を目指していたが、非核化をめぐる米朝協議の停滞が影響した。米韓関係筋によれば、米国は韓国に対し、南北協力が非核化に先行することに懸念を伝えている。
韓国と北朝鮮は4月の首脳会談で、北朝鮮の開城に連絡事務所を置くことで合意。文在寅(ムンジェイン)大統領も今月15日の演説で、数日内に開所すると強調していた。
連絡事務所をめぐって米国は、韓国側からの電力や物資の供給が、国連制裁決議に違反するおそれがあると韓国側に伝えた。ポンペオ国務長官の訪朝中止など米朝協議の停滞も重なり、韓国側も開所に踏み切るのは難しいと判断したようだ。韓国の与党議員は、開所の時期について、「9月の南北首脳会談で対話の雰囲気を再構築した後になるだろう」と語った。
こうした状況のなかでも、南北は協力事業を前進させようとしている。南北赤十字は、今月行われた離散家族の再会事業の際、年内に事業を再び行うことで一致した。非核化協議が停滞したままで南北協力が進めば、米韓関係がさらに冷却化する可能性もある。
実際、複数の米韓関係筋によれば、米韓の意思疎通が滞る場面が相次いでいる。マティス米国防長官は28日の記者会見で、中断している米韓合同軍事演習の再開を示唆したが、韓国大統領府は29日、事前に協議はしていないとして、否定的な立場を示した。韓国に置かれた国連軍司令部は30日、今月下旬に南北連結鉄道を使って訪朝したいという韓国政府の申請を許可しなかったと明らかにしている。(ソウル=牧野愛博)