4年ぶりの再登板となったヤクルト・小川淳司監督(61)の来季の続投が決まったことが4日、分かった。チームは現在、2位。昨季、球団新の96敗を喫して最下位に沈んだツバメを「V字回復」で立て直し、若手に経験を積ませた手腕を、衣笠剛球団社長兼オーナー代行が評価した。来季は2年契約の2年目で、監督通算6年目となる。
衣笠社長が2日、神宮球場での広島戦の前、クラブハウスで小川監督と会談して続投を要請した。小川監督は「自分としては精いっぱいやっている気持ちが強い。今の成績を維持して終盤に向かって頑張ります」と快諾し、固い握手を交わしたという。
契約年数が残っていても、この世界は結果がすべて。秋風が吹くころには監督人事が世間をにぎわすことになる。続投決定が決まった小川監督は4日、「ありがたいです。その思いしかない。いかに戦力を整えていくか、上げていくかをやっていかないといけない」と言葉を選んだ。
開幕前は「最下位」予想
開幕前の順位予想は、最下位が多かった。エースの小川がオフに右ひじを手術し、先発投手が6人そろっていなくては無理もない。大リーグから青木が7年ぶりに復帰したとはいえ、厳しいペナント争いになるとの見方が大半だった。
実際、開幕してから投打がかみ合わず、4月18日に「借金生活」に入ると、同30日には昨年の定位置だった最下位に転落。抑えを任せた新外国人のカラシティーが4連続失点で配置換えを余儀なくされ、「1番山田哲、3番バレンティン、4番青木……」で開幕した先発メンバーもなかなか機能しなかった。
「打順はすぐにどうにかなるもんじゃない。全体的に低調だから。点を取らないと勝てない」。連敗街道から抜け出せず、小川監督がそう、こぼした夜もある。それでも、「外柔内剛」の指揮官は、じっと耐え、勝っても浮かれず、選手の能力を見極めていた。
まずは救援陣の再整備を進め、抑えに石山のほか、ベテラン近藤、2年目左腕の中尾らを起用。競り合いに持ち込めれば勝てる必勝リレーを確立させた。5月30日からは3年ぶりの7連勝を飾り、交流戦では勝率1位。打線も1番坂口、2番青木、3番山田哲、打撃2冠に立つ4番バレンティン、5番雄平で固めると、束になって攻撃できるようになり、得点力はアップ。最大11あった「借金」も一時は完済した。
チーム作りを評価
衣笠社長が一定の評価をしたのはチーム作り。小川監督は2014年に一度監督を退いたあと、強化責任者として育成改革に着手。ドラフトでは大学・社会人頼みではなく、潜在能力の高い高校生を育てる戦略に転換。その芽が出つつあるというのだ。
有望株には「選択と集中」で2軍で経験を積ませ、2年目右腕の梅野、新人の村上(熊本・九州学院高)らが力をつけてきた。5日の中日戦では、選抜優勝の3年目左腕、高橋(京都・龍谷大平安高)がプロ初登板初先発する予定だ。衣笠社長は「3年前に長期計画で立てた強いチーム作りが形になりつつある。クライマックスシリーズに残れるよう頑張って欲しい」とエールを送った。(笠井正基)