奈良県天理市内の自治会が地元の神社の氏子だけを会員とし、他の住民を行事などに参加させないのは差別的取り扱いだとして、奈良弁護士会は11日、自治会長に是正を勧告したと発表した。勧告は8月27日付。
勧告書によると、1992年に地域に転入した夫妻は、自治会費に当たる協議費(年1万3500円)を自治会に納めていた。しかし自治会は集会や神社の祭りなどへの参加を認めず、市広報誌や回覧板も届けなかった。地域には235世帯が住み、協議費を納めているが、自治会は慣例的に神社の氏子52世帯だけを会員として運営されていた。
夫妻は2012年に協議費の納付をやめ、納付済みの協議費の返還と慰謝料の支払いを17年に自治会に求めたが、拒否されたため、人権救済を申し立てたという。弁護士会は「協議費を徴収しながら、正当な理由なく会員を限定するのは信義則違反」などと指摘。すべての住人に自治会員の資格を認めるよう勧告した。
弁護士会によると、自治会は「夫妻だけ参加を認めていないわけではない。人権侵害や差別に当たらない」などと反論していたという。天理市は取材に「自治会が入会資格を定めるのは任意だ。話し合って解決してほしい」としている。(佐藤栞)