九州が地盤のふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)と十八銀行(長崎市)の統合が8月末、公正取引委員会から認められた。低金利や人口減など経営環境の厳しさは全国共通の悩み。統合は地域経済の活性化につながり、再編のモデルとなれるか。
「銀行が二つあれば、貸し渋りされてももう片方に駆け込むことができた。今後はどうすればいいのか」
長崎県で最も大きな離島の対馬(つしま)。観光や漁業が主産業のこの島で、飲食業を営む50代の男性は不安を口にする。島にある銀行の支店は十八銀とFFG傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)のみ。統合で来春以降は実質的にひとつになる。観光業の男性は「競いあって金利が抑えられていたが今後はそうではなくなる」。
島民は1960年に7万人ほどいたが今では3万あまり。かつて支店があった西日本シティ銀行(福岡市)は5年前に撤退した。宿泊業の男性は「島から銀行がなくなるよりまし」と統合に一定の理解を示す。
長崎は九州で最も人口減少が進み、市場は縮んでいる。ライバル銀行との金利競争は激しい。銀行本来の収入源である貸出金から得られる利息は、県内トップの十八銀ですら10年続けて減っている。
「このままでは共倒れになるという危機感があった」。統合を決めた十八銀の森拓二郎頭取は話す。2位の親和銀といっしょになれば、金利競争は軽減される。営業範囲が重なる店舗も多く、統廃合するリストラ効果も大きいと見込む。
計画によると、店舗の統廃合などで新たに500人を捻出し、顧客への訪問を増やし、経営相談によりきめ細かく応じる態勢を整える。財務体質も強くなり、これまでよりも積極的に融資ができるという。森頭取は「統合は銀行が生き残るためではなく地域のためだ」と力を込める。
今回の統合は承認まで2年以上…