10代で、すんなり代表デビューとはいかなかった。11日にあったサッカー日本代表の森保一監督の初陣となった国際親善試合・コスタリカ戦。今回の代表最年少、19歳の冨安健洋(たけひろ)(ベルギー1部・シントトロイデン)に出番は回ってこなかった。23歳以下が主力となる2年後の東京五輪代表の守備の柱として期待されるDFは、気持ちを新たに欧州へと戻った。
「試合に絡めなかった。シントトロイデンに帰って活躍し続けることでしかアピール出来ない」。日本がコスタリカに3―0で勝利した後、冨安は年齢に似合わない落ち着きぶりで淡々と語った。
初の日本代表への選出だった。今回はこれまで代表を支えてきた欧州組の招集が見送られたとはいえ、10代で日本代表に名を連ねることはたやすくない。ましてや経験が強みとなるDFではなおさら。近年、DFで10代で代表戦をプレーしたのは市川大祐など極めてその人数は限られる。
福岡県の出身。188センチ、78キロという体格を生かした対人プレーが強みで、センターバックが主戦場だ。J2福岡の育成組織で育ち、トップチームに昇格。「アジアの壁」と称され、日本代表歴代2位の122試合出場の井原正巳監督もその力を評価し、昨年はレギュラーで起用。今年1月にはシントトロイデンに完全移籍し、7月末に開幕した今季は開幕から6試合連続フル出場している。
「1年でも早くプロになりたかった」とサッカーに捧げてきた男は、ベルギーでもその熱心さは変わらない。午後に練習がないときは、自らジムに出かけるなど「暇な時間がなくて」。ベルギーでは相手チームの選手と1対1になる場面が多く、「1対1のドリブルの対応は少しずつ手応えを感じてきている」と語る。
プレーは激しいが、性格はどこか穏やか。ただ、芯は強い。昨年、J1昇格をかけたプレーオフの1カ月ほど前から左足の内側が痛かった。しかし「痛くてもどうせやるんで、プレーオフが終わるまでは病院に行きません」と周囲に宣言。ダッシュもロングボールを蹴るのも痛みが伴った。名古屋との決勝終盤は、チームメートに「ロングボールは蹴れないんで、蹴ってください」と頼むほど。プレーオフ敗退後、病院で受けた診断は骨折だった。
代表のセンターバックには、吉田麻也(サウサンプトン)、槙野智章(浦和)、三浦弦太(ガ大阪)、植田直通(セルクル・ブルージュ)ら有力選手がひしめく。冨安は「(代表は)簡単に継続して呼ばれるわけではない。シントトロイデンでやるべきことをやるだけかなと思います」。いつも通り、飾らない言葉でそう話した。(堤之剛)