西日本豪雨の復興支援のため、周辺のゲストハウスが、割安な宿泊料金でボランティアを受け入れている。クラウドファンディングで全国から資金を募り、ゲストハウスの経営を支える動きも広がり、支援の連鎖が被災地を包む。
【災害INFO】被災したときに役立つ情報など
ゲストハウスは個人旅行者向けの手頃な宿。シャワーは共同で、談話スペースを備える。基本は多人数の相部屋で、見知らぬ人同士が情報などを交換し合えるのも魅力の一つだ。海外では一般的で、近年、国内でも数が増えてきている。
被災地のために今できること…西日本豪雨支援通信
「ただいまー」。8月30日夕、広島市西区の「広島ゲストハウス縁」に、長靴姿の大学生、滝宮悠佑さん(21)が泥だらけで戻ってきた。「おつかれさま。早く風呂入って休みなよ」。オーナーの正垣(しょうがき)紅(こう)さん(34)が笑顔で迎える。
福岡県飯塚市に住む滝宮さんは広島県福山市出身。8月26日から10泊し、20人が死亡・行方不明となった広島市安芸区内に通った。
「縁」では、今月13日までに国内外からの約70人のボランティアが泊まった。普段は1泊3500円だが2千円で提供した。8月下旬に2泊した岐阜市のカメラマン高田沙織さん(31)は、15人が犠牲になり今も1人が行方不明の坂町小屋浦に通った。「縁」を選んだのは、「割引してでもボランティアを支えようという温かい気持ちが伝わったから」という。
割引は、豪雨から一夜明けた7月7日、帰宅困難な人たちに無料でベッドを提供したのがきっかけだ。「自分にできる形で支援したいと思った」と正垣さんは言う。
2014年にオープンした広島市中区の「広島ゲストハウス碌(ろく)」にも、今月15日までに福岡や東京などからボランティア約70人が泊まった。通常1泊2900円のところを2千円に。オーナーの小林真子さん(33)は「遠くから来てくれる人たちに、何もしないのは心苦しい。せめて泊まりやすい環境を提供したい」と話す。
とはいえ、割引を続けると経営は苦しくなる。
「潰れさせるわけにはいかない」。ゲストハウスの開業支援をする岡山県倉敷市のNPO法人「アースキューブジャパン」代表理事の中村功芳(あつよし)さん(42)は、被災地周辺のゲストハウス経営者らの安否確認をする中で、「縁」や「碌」の窮状を耳にした。
豪雨から約2週間後の7月20日、こうしたゲストハウスを支援するため、インターネットで支援者を募り、資金を集めるクラウドファンディングを呼びかけた。目標金額の50万円は約10日間で超え、広島県の4店と岡山県の5店に届けた。
豪雨をきっかけに中村さんたちが立ち上げた「日本ゲストハウス協力隊」には、中四国をはじめ、北海道や首都圏、関西、九州などから約70店が加わった。
日ごろから交流して顔が見える関係を築き、災害時には、物資の支援や募金活動、ボランティアの紹介などをしていく考えだ。中村さんは「将来は、すべての都道府県に仲間の店を増やすのが目標です」と話す。(大滝哲彰)