僕が代わって育てよう――。北海道厚真町の梅原智哉さん(38)は11日、地震で亡くなった田中博さん(74)、利子さん(68)夫妻と自分の畑があった吉野地区で、土砂崩れの中からコスモスを掘り出し、リュックに詰めた。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
町の中心部で園芸店を営む梅原さんは11日、激しい揺れで目が覚めた。ドカンという音がして体が浮き、家全体が鳴っているかのようだった。電気はつかず、水も出ない。ひょっとして水があるかも、と浄水場と畑のある吉野地区へ車で向かった。道路は途中で寸断され、近づけなかったが、遠くに崩れ落ちた山肌が見えた。帰宅後、まだ通じていた携帯電話でネットニュースを見て、通い慣れた場所の惨状を知った。
同地区には亡くなった祖母宅があり、梅原さんはその畑で野菜や果物を育ててきた。畑の隣に住む田中夫妻は米農家で、互いに収穫を分け合う仲だった。1人で畑仕事をしていると、田中さんは時折「お兄ちゃん大丈夫か」と手伝ってくれた。あぜに咲くコスモスを「きれいだ」と大切にしていた。
晴天となった11日、地震から初めて畑を訪ねた。メロンやスイカはもう少しで収穫の時期だったが、全滅していた。祖母宅も田中さん宅も、跡形もなかった。「ここまでひどいとは思わなかった。川釣りをしたり虫取りをしたりして遊んだ、小さな頃から思い出のたくさん詰まった場所。このコスモスを大切にしたい」(藤原伸雄)