死刑囚が再審請求をしていることは、死刑執行の際に考慮されるべきか。長年の慣例を破り、請求中の執行が相次いでいることで、こんな議論が浮上している。法務省は「執行を認めなければ、事実上の延命につながる」との立場だが、執行されれば取り返しがつかないだけに「慎重な判断が必要」という声もある。
「再審請求中の死刑執行は、憲法が保障する『裁判を受ける権利』を侵害する」。大阪地裁で現在、死刑囚がこう主張し、再審請求中は執行しないことを求める裁判を起こしている。
原告は大阪拘置所に収容されている松本健次死刑囚(67)。兄(自殺)と共謀して2人を殺したとして2000年に死刑が確定したが、弁護人の金井塚(かないつか)康弘弁護士は「手を下していないし、共謀もしていない。知的障害があるのに配慮されず、取り調べで自白を誘導された」と訴える。7度目の再審請求が6月末に最高裁で退けられ、現在は新たな請求を準備中だ。
再審請求に刑の執行を止める効力はない。訴訟で被告の国は今月11日の口頭弁論で「刑事裁判とは別の手続きで判決を取り消し・変更できるなら裁判所の判断が矛盾し、解決できない不合理な問題が生じる」と指摘。「訴えそのものが不適法で却下されるべきだ」としている。次回の口頭弁論は10月26日にある。
訴訟を起こした理由の一つは、冤罪(えんざい)の可能性などを考慮し、「再審請求中の死刑執行は原則しない」という慣例が破られたからだ。
法務省は昨年7月、18年ぶり…