16世紀に豊臣秀吉の朝鮮出兵を迎え撃ち、韓国で「救国の英雄」と呼ばれる李舜臣(イスンシン)将軍をまつる祠堂「顕忠祠(ヒョンチュンサ)」(忠清南道牙山〈チュンチョンナムドアサン〉市)の境内から、「日本の松」と呼ばれてきたコウヤマキ(高野槙)が姿を消した。顕忠祠の関係者が明らかにした。韓国では文在寅(ムンジェイン)政権になってから、日本の統治時代に関係するものを見直す動きが進んでおり、その一環とみられる。
関係者によると、顕忠祠の境内にあるコウヤマキは、1970年に朴正熙元大統領が記念植樹したとされる。これに対し、市民団体は、「抗日の象徴的な場所に、日本の植民地統治の歴史に関わる『日本の松』があるのはふさわしくない」と撤去を求めていた。
顕忠祠の関係者によると、コウヤマキは今月17日、境内から人目につきにくい場所に移されたという。顕忠祠を所管する韓国文化財庁は「木が高く育ちすぎて、景観を害しているため」と説明している。
だが、朴氏の娘で保守系の朴槿恵(パククネ)政権下では、移設要求は再三退けられてきた。一方、文政権は今年になって、1937年の日本統治時代に記念日となった「鉄道の日」を9月から6月に移すなど、「日帝残滓(ざんし)の清算」を理由に、日本統治時代に関わる文物の見直しを進めている。そのため韓国メディアでは、コウヤマキの移植も「政権交代が影響した」と指摘している。(ソウル=武田肇)