インドネシアで来年4月に行われる大統領選の選挙戦が23日、始まった。再選を目指す現職ジョコ・ウィドド氏(57)と、前回選挙で惜敗した元陸軍特殊部隊司令官の野党党首プラボウォ・スビアント氏(66)による一騎打ちとなる。同国には日本企業2千社近くが進出しており、7カ月に及ぶ舌戦に注目が集まる。
5年の任期満了にともなう直接選挙で、17歳以上の国民が投票権を持ち、正副大統領候補のペアを選ぶ仕組み。来年4月17日に初めて国会議員選挙とともに実施される。
ジョコ氏は5割超の高い支持率を維持し、地方のインフラ整備など1期目の実績を訴える考えだ。「政策を戦わせ、けなし合うことはやめよう」。選挙戦前から、プラボウォ氏に政策論議を求めてきた。一方のプラボウォ氏は22日の集会で「道路は必要だが、外国製の車でいっぱいだ」と、ジョコ氏の政策を皮肉った。通貨ルピア安も利用し、政権批判で攻め込む考えだ。
選挙戦は、人口の9割弱を占めるイスラム教徒の支持がカギを握る。ジョコ氏は、2017年のジャカルタ州知事選で盟友の現職が「反イスラム」と攻撃されて敗退した苦い経験がある。このため、副大統領候補を国内最大のイスラム組織ナフダトゥール・ウラマ(NU)の前総裁マアルフ氏(75)とし、イスラム勢力の票固めを託した。一方のプラボウォ氏も1週間前、急進的な団体を含むイスラム組織の支持を取り付けた。
また、若年層の動向も焦点になる。1980年以降生まれで選挙権を持つ17~38歳が1億人前後と5割を超えるためだ。ジョコ氏は8~9月のアジア大会を成功させた大会組織委員長を選対本部長に任命。若者票の取り込みを目指す。プラボウォ氏は副大統領候補に、若い世代に人気がある実業家でジャカルタ州副知事だったサンディアガ氏(49)を起用している。
インドネシアは地下鉄や港のインフラ整備でも日本との関係が深い。中国の南シナ海進出を受け、近年は安全保障でも関係を強めている。日本政府関係者は「大統領選は内政が争点になり、どちらが選ばれても外交や対日関係は大きく変わらないだろう」と話す。(ジャカルタ=野上英文)