京都大の本庶佑(ほんじょたすく)・特別教授(76)は、ノーベル医学生理学賞の受賞決定から一夜明けた2日、妻滋子さん(75)と京大で並んで記者会見に臨んだ。本庶さんは「幸運な人生を歩いてきた」と語り、滋子さんは「家の中でも、何でも諦めない、とことん極める」と夫の人柄を語った。
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午前9時すぎ、本庶さんと滋子さんはリラックスした表情で百周年時計台記念館の会見場に姿を見せた。
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「ちょっと落ち着いていろいろ考えてみますと」と切り出した本庶さんは、「私は本当に幸運な人生を歩いてきたと言わざるを得ません」と語り始めた。
第1の幸運として、「まず、健康であること。性格的に突き詰めて考える。本庶家は代々お寺で、そういう人が多いと聞いている」と述べた。第2として、遺伝子に関わる生命科学の研究が急速に進んだ1970年代以降にキャリアを重ねてきた歩みを語った。
若い頃に渡米して潤沢な研究資金を使い、帰国後も研究費の支援を受けたという。「研究のタイミングと日本の高度経済成長が非常に合っていた。もうやめようと思ったことは一度もなかった」と振り返り、「こういう人生を二度やりたいというのはぜいたくだと言われるくらい、充実した人生だった」と語った。
一方で、基礎研究に取り組む、いまの若手研究者が置かれた環境に危機感を示し、「ぜひ長期的展望で基礎研究をサポートして、若い研究者が『人生をかけてよかった』と思える国になることが重要ではないかと思います」と訴えた。
同席した滋子さんは大学で生化学を学び、「研究の大変さは知っていた」という。「結婚してすぐに子どもに恵まれたこともあり、ずっとここまで主人を支える側に回ってきました」と振り返った。
家庭での本庶さんは「とことん極める人」。趣味のゴルフの練習にも余念がなく、徹底して自分のフォームを研究し、フォームの改良やパターの練習を家でしているという。「家での会話も中途半端に終わらせない。そういう態度がこの結果につながったのかなと思っています」と語った。
本庶さんは記者会見で、「典型的な亭主関白として研究に邁進(まいしん)してきた。家族に感謝したい」と語ったが、滋子さんは会見後、報道陣の取材に「亭主関白というのは若いとき。定年後だいぶ経つが、かなり時間的な余裕ができて、最近は非常に優しい」と笑顔を見せた。ゴルフも時折、一緒にするという。(波多野陽、小林正典)