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なだ万が産直フェア まずルーツの長崎 後引く優しい味

しにせ料亭のなだ万は、日本料理の魅力を国内外に発信しようと、「都道府県別 産直フェア」を展開する。第一弾は創業のルーツである「長崎県フェア」。11月1日から全国18の直営店で始まるのを前に、プレス向け試食会があり、記者が試食してみた。


長崎県フェアは、なだ万の屋号の由来である初代・灘屋萬助(なだやまんすけ)が長崎の出身で、1830年に大阪で開業した料理屋が長崎料理を基調としていたことなどから、ゆかりの深い長崎県との共同企画として実施。なだ万自慢の名物料理に加え、長崎県産の食材を使って、なだ万流に長崎の郷土料理をアレンジした全9品の懐石コースを税・サービス料込み1万円で提供する。11月30日までで、5千食の販売を目指している。


豪商をうならせた味


なかでもかつて浪速の豪商らの舌をうならせ、今も一番の名物料理が、長崎を代表するしっぽく料理の「豚の角煮」だ。通常はコース料理に入れないという豚の角煮を入れることからも、フェアにかける意気込みがわかる。


料理法は、代々伝わる秘伝のレシピに基づく。豚バラブロックをフライパンで焼いて焼酎や水、おからなどで蒸し煮する。さらに、調味料を入れてたく。温度管理を徹底し、計約6時間かけて仕上げるという。


はしを入れると、簡単にほぐれた。脂がほどよく抜けていて、上品なやさしい味が口いっぱいに広がった。後を引くおいしさだ。「料理とは、作り手の手の込み具合で、食べる人の満足感を高めるものなんだ」とあらためて感じた。


郷土料理をアレンジ


アレンジを加えた数々の長崎の郷土料理も印象的だった。なかでも一押しとしておすすめをしたいのが、かんころもちのラクレットチーズ焼きだ。


かんころもちは、サツマイモをまぜこんだもち。コメがあまりとれなかった時代に考えられたという。通常は、焼いてそのまま食べる。チーズ焼きにすると、かんころもちの素朴な甘さとラクレットの塩気が絶妙にマッチ。もち特有の粘り気は少なく、サクッとした食感だった。「こんなアレンジができるとは」と、地元の出席者から感服の声があがっていた。


2回目は愛媛、3回目東北


産直フェアは、2020年に東京五輪・パラリンピックが開かれるうえ、なだ万が創業190周年を迎えるのにあわせてシリーズ展開。2回目は19年春に愛媛県、3回目は同年秋に東北の1県での開催を予定している。野原優社長は「多くの外国人に日本料理のすばらしさ、おいしさをもっともっと伝えていきたい」と話す。


200年近くにわたって続くなだ万の味。だが、その味を守っていくのは簡単ではない。人件費の上昇が大きくのしかかる。「長時間労働させるわけにはいかないので、調理場の人数を増やさなければならない」(大嶋高幸・常務執行役員総料理長)からだ。


一括仕入れを拡大へ


人件費の上昇分を価格に転嫁するつもりはなく、フェアをとっかかりにコスト削減に本腰を入れる構えだ。具体的には、各店ばらばらに仕入れていた食材を、一括仕入れにし、市場を通さず、産地から直接仕入れる比率を高めていくことを計画している。


なだ万の強みは、各店の料理長によるオリジナルメニューの提供だ。違う店に行けば、違う料理を味わえるということをモットーにしている。このオリジナリティーを損なわない程度に、産直一括仕入れを広げていく考えだ。


野原社長は「今よりコストが下がっておいしいものが提供できれば一石二鳥。さらに、地域の活性化にも貢献できれば」と話す。(佐藤亜季)


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