大阪・関西将棋会館で18日に行われた第77期将棋名人戦・B級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の対局で、相手の駒を飛び越えて角を動かすという珍しい反則があった。トップ棋士同士による真剣勝負の場で何があったのか。
「事件」があったのはB級1組順位戦7回戦・橋本崇載八段(35)と菅井竜也七段(26)の対局だ。
同組は名人挑戦権を争うA級順位戦の一つ下の階級で、現在、渡辺明棋王(34)や谷川浩司九段(56)らタイトル・A級経験者が半数を占める「鬼のすみか」とも呼ばれる場所。橋本も元A級の一人だ。菅井も昨年、羽生善治竜王(48)から初タイトルの王位を奪った若手のホープ。今年失冠したもののA級昇級を狙っている。
この対局前の時点でリーグ成績はともに1勝4敗。負ければB級2組への降級を心配しなくてはならない状況で、双方にとって負けられない一戦だった。
菅井の先手で午前10時に始まった対局は午後9時、終盤戦になっていた。形勢は菅井がリードし、持ち時間各6時間のうち、残り時間も橋本7分、菅井は3時間以上と大差だった。橋本は「形勢ははっきり不利。時間もないしダメだなと思っていた」と振り返る。
そこで109手目、菅井が7九にあった角を持って▲4六角と指した。この手は、6八の地点にある後手のと金を飛び越える反則手だった。当初、橋本は「こんなうまい手があるのか」と思い、反則だと気づかなかった。6四の銀取りになっているため、2分近く受ける手を考えた。
ところが1分ごと秒読みをして…