天皇、皇后両陛下は27日、全国豊かな海づくり大会に出席するため、羽田空港発の特別機で高知県に入った。高知空港前では地元の人たちが多数待ち受け、両陛下は笑顔で手を振ってこたえた。退位を控え、この大会への出席は今回が最後。全国植樹祭、国民体育大会とともに「三大行幸啓(ぎょうこうけい)」と呼ばれる毎年定例の地方訪問の締めくくりともなる。
房総半島の最南端近く。千葉県館山市の北条海岸に、2匹の魚をかたどった記念碑がある。1957年6月、ここで水資源の保護を訴える「放魚祭」が開かれ、皇太子時代の天皇陛下が初めて出席した。当時、乱獲や工場汚水の流出で漁場は荒廃しつつあり、以降、陛下が海や漁業の将来への関心を高める契機ともなった場だ。
海を守ろうという動きは次第に広がり、「放魚祭」は「全国豊かな海づくり大会」として毎年全国各地の回り持ちで開かれることになった。81年に大分県で第1回大会が開かれ、皇太子ご夫妻時代の天皇、皇后両陛下が出席した。
天皇陛下は即位に際した89年の会見で「皇太子時代、毎年豊かな海づくり大会に出席しましたのも日本をかこむ海が少しでも良くなるように願ってのことでありました」と語り、即位後も毎年欠かさず出席して漁業関係者をねぎらった。
この大会に加え、春の全国植樹祭、秋の国民体育大会は恒例の地方訪問として「三大行幸啓」と称された。主目的は各式典への出席だが、あわせて福祉施設や資料館訪問などの「地方事情ご視察」が組み込まれた。長く陛下に仕えた元側近は「天皇としてできるだけ早く全国を回り、国民の生活に触れたい。陛下のそんな思いを受け、二つの県をまたぐ日程を組んだこともあった」と振り返る。
「三大行幸啓」を中心に、天皇陛下は即位から15年たった2003年に全都道府県を踏破。昨年11月に両陛下で2巡を果たした。
代替わり後、両陛下は一切の公的活動から退く考えで、三大行幸啓への出席は今回で最後。来年からは新天皇となる皇太子さまに引き継がれる。宮内庁関係者は「両陛下は体調が万全とは言えないが、集大成となる訪問に特別な思いを抱いているようだ」と話した。(島康彦)