大事故を起こした企業に高額な罰金を科す「組織罰」の創設を求め、JR宝塚線(福知山線)脱線事故の遺族らが26日、法務省を訪れ、山下貴司法相に請願書と約1万人分の署名を手渡した。遺族らは今後も署名活動を続けるとともに、国会議員などへの説明を始め、実現を目指す。
請願に訪れたのは「組織罰を実現する会」の代表で、脱線事故で長女を亡くした大森重美さん(70)=神戸市北区=や笹子トンネル天井板崩落事故で長女を失った松本邦夫さん(67)=兵庫県芦屋市=ら。山下法相と面会後、刑事法制に関する企画・立案をする刑事局の担当者とも会い、請願の内容を説明した。
2005年4月に発生し、107人が死亡した脱線事故をめぐっては、昨年6月までに業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の歴代社長4人の無罪が確定。会では、個人にしか問えない刑法の業務上過失致死罪に両罰規定を設ける特別法を作り、企業など法人にも罪を問えるようにすることを求めている。
大森さんは面会後に会見し、「娘の死を無駄にせず世の中に役立てたい。法相に直接署名を手渡せたことは大きな励みになった。これをきっかけにして多くの人に組織罰の必要性を知ってほしい」と話した。
閣議後の会見で、遺族と面会した感想を尋ねられた山下法相は「業務上過失致死罪について両罰規定を設ける法制度を作ることは、これまでの法体系との整合性など様々な課題があると言わざるをえない。悲惨な事故への厳正な対処は必要だが、どう対処するかについて関係省庁と共有する必要がある」と話した。(千種辰弥、浦野直樹)