最大瞬間風速58・1メートル――。今年9月、日本を襲った台風21号による暴風は、各地に爪痕を刻んだ。大阪府の銭湯では7割以上が被害を受け、煙突が折れて廃業するところも。現在も台風26号が発生するなどしており、専門家は暴風による被害の危険性を訴える。
窓ガラスが「カタカタ」揺れ、室内なのに、大きな風音が聞こえる。
9月4日午後2時ごろ、大阪府東大阪市の住宅街の一角。銭湯「長瀬温泉」経営者の町口英雄さん(69)は、自宅1階のテレビで台風のニュースを見ていた。しきりに風雨の強さを訴えている。そんなときだ。
小石が「バラバラ」と落ちるような音に気づき、2階に上がると、煙突が浴場のトタン屋根に向かって倒れているのが見えた。煙突内にたまっていた黒いススが宙を舞う。トタン屋根は押しつぶされたが、営業時間外だったため、幸いけが人はいなかった。
「まさか、風で倒れるなんて……」
創業したのは亡くなった父で、60年以上続いている。煙突はその当時からのもので、太さ約60センチ、高さは約13メートルあった。それが根元近くから、ポッキリと折れていた。
このころ、東大阪市に隣接する大阪市では、最大瞬間風速40メートル以上の「非常に強い風」が吹き荒れていた。速さは特急電車並みで、走行中のトラックが横転するおそれがある強さだ。
大阪府公衆浴場組合(大阪市天王寺区)の関係者から、煙突の再建費用として500万円以上かかると言われた。経営は昨年暮れごろから赤字続きで、「もう用意できるお金がない」と廃業を検討中だ。
同組合によると、府内の銭湯は9月末現在で400軒。そのうち少なくとも約4分の3が台風21号による被害を受けた。長瀬温泉と同様に煙突が折れたり、屋根が損壊したり、天窓が割れたり。今月10日時点で4軒が廃業届を出した。藤本隆夫・同組合事務局長は「こんな深刻な事態は初めて。廃業届は今後も増えるかもしれない」と危機感を募らせていた。今後、各自治体に支援を求める方針という。
■風の危険性、…