これまでのスポーツ観と一線を画す運動部活動が、中学、高校で徐々に広まっている。勝ちを目指さなくてもいい。一つの競技にこだわらなくてもいい。そんな「ゆる部活」。どんな活動なのか。
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東京都世田谷区の東深沢中に6年前に作られた「体力向上部」の活動は、午前7時15分に始まる。校庭でハードルを跳び越えたり、ジョギングしながらボールをトスしたり。45分間、体を動かしてから授業へ向かう。
部員は約60人。女子が3分の1ほどだ。野球や柔道に打ち込む生徒もいれば、文化部所属の生徒もいる。体力レベルは様々だが、目標はあくまで体を動かすこと。月曜を除く平日の朝に活動している。
ある3年生男子は、地域の野球チームの活動が週2回しかなく、「もっと体を動かしたい」と入部。美術部の2年生女子は「運動はしたいけど、やりたいスポーツがなかった」と友達と一緒に入った。顧問の佐々木政紘教諭は「無理はさせない。自分のペースでやって、少しでも体力が上がればいい」と話す。
世田谷区によると、ボクササイズを含めて色々な運動をする軽運動部など、体力向上や体を動かすことを目的にした運動部は区内10校に広がっているという。
近年の運動部は、長時間の活動や暴力的な指導などの「ブラック部活」の解消が課題となっている。
そんな中、スポーツ庁が今年3月にまとめた運動部活動に関するガイドラインには、「週2日以上の休養日」などの活動時間の制限だけでなく、運動が苦手な生徒も入りやすい「ゆる部活」の設置も盛り込まれた。行きすぎた活動に釘を刺すだけでなく、多様性も認めていこうという方向性だ。
2017年度の「全国体力・運動能力、運動習慣などの調査」では、1週間の総運動時間が60分未満の中学2年女子は19・4%。全く運動をしないという層も13・6%いた。
また、運動部や地域のスポーツクラブに所属しない中学2年生に「運動部活動に参加する条件」を聞くと、「好きな、興味のある運動やスポーツができる」が男子は42・9%、女子は59・1%。「自分のペースでできる」が男子は44・4%、女子は53・8%を占めた。
こうしたことから、現在の運動部活動は生徒の潜在的なニーズに応え切れていないと分析。競技志向を離れ、「自分のペースで体を動かしたい」「色々なスポーツをしたい」という生徒のニーズに応える部の設置を推奨している。
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