教員や子どもへの過度な負担が指摘される「ブラック部活動」からの脱却と、練習中の重大事故を防ぐため、全日本柔道連盟が部活動の教員向けに「指導手引き」を作成した。中学生向けに推奨する練習スケジュールは1日2時間で、週休2日。競技団体が率先して作った背景には、部員数減少への危機感もある。
勝利めざさない「ゆる部活」 体力向上部・ヨガ同好会…
「昭和の時代から言われていた謎の訓示『1日休むと取り戻すのに3日かかる』は運動生理学、発育発達、心理学的に考えても理解できません」
全柔連は指導の手引の冒頭で、こう強調した。「練習量がすべて」といった言葉が浸透している柔道界では画期的な内容だ。
大きな特徴の一つは、中学1年と、中学2年以上に分けて練習メニューの見本を写真つきで提示したこと。中学1年では基本動作や受け身の練習に時間をかけ、上級生の練習を見学する「見取り稽古」の時間を設けるようにした。
生徒の体力差や技量の差に配慮し、「焦らない、慌てない指導を心がける」と強調。そのため、2時間以内で週休2日なのだ。勝利を優先した過度な練習が部員のけがや燃え尽き症候群を引き起こすだけでなく、教員にも負担になっていると警告し、「『他の学校はもっと長く練習している』などの周囲の声やプレッシャーから解放されましょう」と呼びかけている。
競技人口も減少
スポーツ庁は今年3月、中学校の運動部活動の総合的なガイドラインとして、「週2日以上の休養日(土日は1日以上)」を基準と明記。これを受け、全柔連は今年9月に今回の手引を発表した。
手引作成の責任者を務めた全柔連特別強化委員の木村昌彦・横浜国立大教授は「競技力の追求より、スポーツを楽しむというのが本来の部活。しかし、そういう声を競技団体からは上げにくかった面もある」と言う。
一方で柔道も少子化に伴う競技…