体操の世界選手権は第8日の1日、女子個人総合決勝があり、昨年4位の村上茉愛(日体大)は4種目の計55・798点で2位に入った。日本女子の同種目での銀メダルは初で、過去のメダル獲得は1966年銅の池田敬子、2009年銅の鶴見虹子の2人。寺本明日香(ミキハウス)は54・299点で10位だった。
リオデジャネイロ五輪金メダルのシモーン・バイルス(米)が57・491点で4度目の優勝を遂げた。休養にあてた昨年は欠場したが、3連覇を果たした15年以来の王座に返り咲いた。3位は前回優勝のモーガン・ハード(米)で55・732点だった。
村上は跳馬で好発進。ミスを抑えた演技で3種目を終えて5位につけ、最後のゆかで高得点を出した。
持てる力、出し切る
最後のゆかの演技を終えると、ひざに手を着いて深く息を吐いた。笑顔はなかったが、持てる力を出し切った。そんな表情だった。
村上は2日前の団体決勝で出たミスを修正した。テーマは「縮こまった演技でもったいないミスをしないこと」。苦手の段違い平行棒と鬼門の平均台を乗り切り、最後は得意のゆかで14・000。用意したぎりぎりのシナリオをたどった。
昨年王者のハードをはじめ、周囲がミスを出すなか、こつこつとノーミスで演技をつなげていった。最終演技者のバイルスに抜かれたが、堂々の2位だ。
0・100点差に泣いたのは1年前の同じ舞台。着地が1歩動いた減点分に相当する差でメダルは手からこぼれ落ちた。
今季は「0・1を拾いにいく」と言い続けてきた。拾うとは、小さな減点を重ねて取りこぼさないこと。着地、倒立の角度、つま先の割れ……。減点される要素を徹底して見直した。
昨年の決勝で落下した平均台の構成も変えた。落下の原因になった2回ターンを、あえて苦手としていたジャンプ系の技に入れ替えた。勝つための戦略的な判断だった。
世界のトップ級と難度点では劣る分を丁寧に磨き上げた演技で補った。(潮智史)