第2次世界大戦中に多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の出生地について伝えたCBCテレビ(名古屋市)の報道番組「イッポウ」の特集で名誉を傷つけられたとして、NPO法人「杉原千畝命のビザ」と理事長らから申し立てを受けていた放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は7日、放送は名誉毀損(きそん)にはあたらず、放送倫理上の問題もないとする見解を公表した。一方で同局の取材のあり方についての要望も盛り込んだ。
審理の対象は、2016年7月~17年6月、東海圏で平日夕に放送された報道番組「イッポウ」で計10回放送された特集など。岐阜県八百津町が、杉原の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」(当時)に登録申請したのを受けて放送された。杉原が自らの出生地などについて記した手記が、本人の自筆ではない可能性が高いことを筆跡鑑定士の見解として伝えるなどした。
これに対し、手記を保管するNPO法人側は、「法人の副理事長2人が手記を偽造したなどと伝えた放送内容によって名誉を毀損された」として、委員会に申し立てていた。
審理を続けてきた放送人権委は見解で、一連の放送はNPO法人の関係者が手記の作成に関与した事実などは示していないと認定。番組は出生地に関する疑問を提示し、八百津町の対応を問う内容だと視聴者には受け止められるとして、「申立人の社会的評価を低下させるものではなく、名誉毀損とはならない」と結論づけた。
一方で放送人権委は見解で、CBCテレビに対する要望も盛り込んだ。筆跡鑑定で浮上した疑問点について「申立人の反論や説明を聞くことが望ましかった」とし、今後の取材・報道にあたって参考にするよう求めている。
見解を受けてCBCテレビは、「弊社の主張がほぼ受け入れられたものと考えています。指摘された要望などについては真摯(しんし)に受け止め、今後の番組制作に生かして参ります」とコメントした。