農家など1次産業の担い手不足と人口減少を食い止めようと、自治体など公的な団体が道外から女性を招き、現地の男性と交流を深めてもらう婚活ツアーが道内各地で盛んだ。2013年には少子化対策として婚活支援の交付金が創設されるなど国も支援に乗り出した。どんなツアーなのか、同行させてもらった。
「まだ熱いから気をつけて」「出来たてのチーズ、もちもちしているんですね」。先月12日、別海町。チーズの加工体験施設で、男女8人が加工体験を楽しんでいた。全員、まだ出会って1時間ほど。ぎこちない雰囲気も漂う中、「チーズを作ればすぐに仲良くなれますよ」との施設職員の一言に笑みがこぼれる。
参加したパート従業員中道知代さん(34)=大阪府枚方市=は「子どもの頃に家族旅行で来て以来、北海道が好き。地元の学校は生徒数が多すぎたから、自分の子どもは大自然の下でのびのびと育てたい」と話す。
別海町で30年以上続く婚活ツアー「菊と緑の会」でのひとこまだ。枚方市から同町に移住した女性が、酪農家の出会いの機会の少なさを枚方市に訴えたことがきっかけで、1984年に始まった。女性の参加費は3万円。これまでに酪農家男性と道外の女性計1200人以上が参加し、うち93組が結婚した。
今年は26~42歳の酪農家男性7人、27~42歳の女性9人が参加。参加女性は町内の旅館に滞在しながらチーズやソーセージの加工、酪農作業体験をしたり、摩周湖を見学したりした後、3日目の夜に気になる異性を選ぶ「マッチング」が行われる。今年は2組がカップルになった。
約300万円の費用は農協と町が負担する。別海町産業後継者対策相談所の専任相談員、川崎武さんは「実際に酪農の雰囲気を肌で感じられるのが女性から好評。ツアーは町の後継者不足解消に貢献してきた」と胸を張る。
実際、ツアーは出会いの少ない酪農家の男性にとって貴重な場だ。今回参加した男性は7人とも将来的に牧場を経営する立場で、酪農を続けるためにパートナーを探しているという。
3年前から伯父の牧場で働く男性(42)は昨年に続き参加した。「朝から晩まで牛舎にいて出会いはないに等しい」と嘆く。搾乳もえさやりも1人では出来ない酪農家にとって、結婚は切実な問題という。「年も年だし、早く探さなきゃと焦っている。パートナーがいないと酪農を辞めなきゃいけない。このツアーにかけている」
■農家女性×道外男性の情報は少…