シリアなどから欧州を目指す難民が、トルコやギリシャで行き場を失って滞留している。何が起きているのか。記者が現場を歩いた。(イズミル=其山史晃、レスボス島=河原田慎一)
エーゲ海に面するトルコ西部イズミル県のバーデムリ。海岸に灰色のゴムボートが放置されていた。焼け焦げた木材と金属板は船体とみられる。「レスボスに渡ろうとして失敗した難民のものだ。再び使えないよう軍警察が燃やしたんだろう」と地元の漁師レベント・ウンジュルさん(58)は話す。
ギリシャのレスボス島がわずか15キロ先にあるため、難民らが渡るルートになっている。3年前には数日おきに100人を超える姿が見られたが、今は1カ月に1度くらい。1グループは約30人で、複数の子どもを連れた人が多い。こうした「渡し場」がバーデムリに10カ所ほどある。
国際移住機関によると、2014~16年に地中海経由で欧州に渡った難民や移民の3分の2(約104万8千人)がトルコからギリシャを経由した。その半数超がシリア人。遠くアフガニスタンから逃れてくる人もいる。
16年3月、欧州連合(EU)とトルコは、ギリシャへの「密航者」をトルコに送還する代わり、同数のシリア難民を欧州がトルコから直接受け入れる、とする流入抑制策で合意した。トルコは沿岸の警戒を強め、このルートを使う人は今年1~9月で約2万3千人にまで減った。
イズミルでゴムボートに乗る寸…