台湾の統一地方選で与党民進党が惨敗し蔡英文(ツァイインウェン)総統が党主席を辞任したことで、2020年の総統選に向け「ポスト蔡」を意識した動きが活発化している。蔡氏の再選が危うくなった民進党が戦略の仕切り直しを迫られる一方、野党国民党は政権奪還に勢いづく。地方選から息つく暇もなく総統選レースが始まった。
台湾・蔡氏が謝罪「支持者失望させた」 無党派がうねり
蔡氏に辞意を伝え、慰留されていた行政院長(首相)の頼清徳(ライチントー)氏(59)は26日に記者会見を開き、「政局の安定に協力する」と留任することを表明した。辞意を表明した陳菊・総統府秘書長も留任する。
頼氏は将来の総統候補と目される民進党のホープ。00年の初の政権交代以降、歴代総統は2期8年務めてきたことから、頼氏も蔡氏が2期を終えた24年の総統選に挑むとみられていた。
今後、党内で「蔡氏では戦えない」との声が高まった場合、1期目の蔡氏を差し置いてあえて出馬に踏み切るのかなど動向が注目される。
民進党は28日、選挙結果を総括する幹部会議を開く。党関係者によると、代理主席を決め、20年総統選については今後、候補の選定方法も含めてゼロから議論していくという。
馬英九氏「再登板」の声も
一方、16年総統選で下野したばかりの国民党にとっては、4年で政権に返り咲くチャンスだ。統一地方選投開票日の24日、党本部では党主席の呉敦義氏(70)に「呉氏を総統選に」との声も起きた。
しかし、高齢もあって総統候補としての呉氏待望論は盛り上がりを欠く。世代交代も進んでおらず、16年の総統選で蔡氏に敗れた新北市長の朱立倫氏(57)、前総統の馬英九氏(68)らの「再登板」もささやかれる。今回、民進党の地盤の高雄市長選で当選し注目された韓国瑜氏(61)に期待する声も上がっている。
無所属で台北市長に再選した柯文哲氏(59)も無党派層や若者から厚い支持を集めるが、今のところ総統選への出馬を否定しており、情勢を見守る構えだ。
台湾統一地方選挙の結果を受け、中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は25日、「幅広い台湾民衆が両岸関係の平和的発展がもたらす『配当』を望み、経済と生活の改善を希望する願いが反映されたものだ」との談話を出した。
その上で「台湾の多くの県や市が、両岸都市の交流に参加することを歓迎する」と呼びかけた。台湾の地方都市との連携を強め、蔡政権を揺さぶる狙いがありそうだ。(台北=西本秀)