世界初となるiPS細胞から神経のもとになる細胞を作り、重い脊髄(せきずい)損傷の患者に移植する慶応大のグループの臨床研究について、同大は28日、再生医療を審査する学内の委員会の承認を受けたと発表した。27日付。グループは年内にも厚生労働相に計画を提出。厚労省の部会で認められれば、早ければ夏ごろに臨床研究を始める見込み。
脊髄損傷を患者の細胞で回復、承認へ 「一定の有効性」
計画しているのは岡野栄之教授と中村雅也教授ら。損傷後2~4週間の患者の損傷部に、神経のもとになる細胞を移植する。脳からの信号を伝える組織をつくり、運動や知覚の機能回復を目指す。
iPS細胞から作った神経のもとになる細胞は腫瘍(しゅよう)化するおそれがあるため、今回の計画では、安全性を優先し、患者に移植する細胞数は最小限の200万個にする。リハビリと合わせ、1年かけて安全性と効果をみる。将来的には移植する細胞を増やしたり、慢性期の患者を対象にしたりすることを目指している。
脊髄損傷の治療をめぐっては、患者自身から採取した間葉系幹細胞を使い、札幌医科大とニプロが共同開発した再生医療製品もある。早ければ年内にも厚労相に認められ、条件を満たした医療機関で使えるようになる。現時点では、安全性はあるが有効性は期待できるという段階のため、7年間の条件付きの承認で、今後効果などを確認する。(戸田政考)