戦時中、八幡製鉄所(北九州市)で働かされた韓国人元徴用工1人の遺族が、新日鉄住金に損害賠償を求めた控訴審判決が29日、ソウル地裁であった。裁判長は同社の控訴を棄却し、遺族に1億ウォン(約1千万円)の賠償を命じる判決を言い渡した。
韓国最高裁、三菱重工にも賠償命令 元徴用工らの訴訟
判決などによると、元徴用工は1943年3月から同製鉄所で劣悪な環境で働かされたうえ、給料は強制的に貯金させられ、帰国時にも受け取れなかった。
韓国大法院(最高裁)が10月30日、同社に対し元徴用工への賠償を命じる判決を確定させて以降、初めての下級審判決。
裁判長は判決言い渡しの際、元徴用工や遺族が賠償を請求できる期間は「2012年5月から3年間」と言及した。韓国でも民事訴訟の請求権は、被害者が損害を知った時から3年間行使しなければ時効により消滅するとされる。12年5月は別の徴用工訴訟で、大法院が初めて原告の賠償請求権を認め高裁に差し戻した時期で、その時点から3年間のみが元徴用工と遺族が請求権を行使できる時期と明示した形だ。
原告の弁護士は記者団に「勝訴はしたが、裁判長が言及した時効の定義が適用されれば、今後訴訟を考えている元徴用工や遺族の訴えは裁判所で認められなくなる。上級審で変更されることを求める」と批判した。(ソウル=武田肇)