安倍晋三首相は1日午後(日本時間2日未明)、訪問先のブエノスアイレスでロシアのプーチン大統領と会談し、両国の外相を責任者とする新たな枠組みを設け、平和条約交渉を議論していくことで一致した。1月にも予定される首相のロシア訪問前に協議を始める。
日本側の説明によると、新しい枠組みの交渉責任者は河野太郎外相とラブロフ・ロシア外相。それを支える交渉担当者には両国首脳の特別代表として森健良外務審議官とモルグロフ・ロシア外務次官をあてることで一致した。会談後、プーチン大統領は記者会見で、「相互作業の補足的なメカニズムをつくることと相互の信頼のレベルを高めることが必要だという点で合意した」と述べた。
両首脳は11月14日のシンガポールでの会談で1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意。プーチン氏はその直後の記者会見で、宣言について「全てが明確なわけではない。2島が誰の主権下に残るかも述べられていない」と強調した。首相は2島先行返還を軸に交渉する方針に転換し、新たな枠組みで条約交渉を加速させたい考えだが、主権問題が大きな課題となりそうだ。この問題に関して野上浩太郎官房副長官は、今回の首脳会談後、記者団に「交渉内容に関わることで、答えることは差し控えたい」と述べるとどまった。
今回の会談で首相は「平和条約の問題を中心にシンガポールでの首脳会談の結果を踏まえながらしっかりと議論したい」と強調。プーチン氏は「日ロの協力関係の発展を確認するため、あらゆる機会を使っている」と応じたという。
首相は、ロシア警備艇によるウクライナ艦船の拿捕(だほ)に懸念を表明し「双方の当事者が自制し、乗組員の早期釈放を含め、事態が沈静化に向かうよう期待する」とプーチン氏に伝えた。これに対するプーチン氏の回答について、日本側は内容を明らかにしていない。(ブエノスアイレス=小野甲太郎、喜田尚)