ホワイトハウスのサンダース報道官は1日、アルゼンチンで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領と非公式な会話を交わしたと明らかにかした。トランプ氏はウクライナ情勢を理由に首脳会談の中止を表明していた。
サンダース氏は、会話を交わしたのは11月30日の夕食会だとし、「多国首脳が参加するイベントでは通例のこと」と説明した。
トランプ氏は同月下旬に起きたロシアの国境警備隊によるウクライナ艦船への銃撃・拿捕(だほ)事件で「艦船と乗組員が戻っていない」として、1日に予定していた会談を直前にキャンセルした。ただ、ロシアとの関係改善を掲げるトランプ氏は一貫して直接的な批判を避けている。
今回の会談中止以前は、ホワイトハウスはプーチン氏をワシントンに招待していることを明らかにしていたが、実現するのかは不透明になっている。
一方、プーチン氏は1日、G20首脳会議終了後の記者会見で、トランプ氏と銃撃・拿捕事件について会話を交わしたことを明らかにした。「この問題をめぐって彼には彼の、私には私の立場がある。それぞれの意見は変わらなかった」などと話した。
プーチン氏は、トランプ氏が10月に中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明したことや、核弾頭の数を制限する新戦略兵器削減条約(新START)が2021年に期限を迎えることなど、両国間の課題は多いと指摘。「時期が熟しているのに、正式な会談が開かれなかったことは残念だ」と述べた。
銃撃・拿捕事件については11月30日にフランスのマクロン大統領や1日のドイツのメルケル首相との会談でも話し合ったという。
プーチン氏は「われわれの立場だけではなく、この事件が起きた経過も話した」とし、「(艦船の)航海日誌にはわれわれの領海に侵入することが課題だと書かれていた」などとして、「領海侵犯」を理由とする拿捕の正当性を主張。一方で「彼らを納得させることができたかどうかは分からない」とも話した。
また、ホワイトハウスによると、トランプ氏も1日、メルケル氏と会談し、ウクライナ情勢への対応を協議したという。(ブエノスアイレス=杉山正、喜田尚)