サルやシカ、イノシシなどによる獣害の実態や対策を三重県名張市内で毎月発信するユニークな情報紙「猿新聞」が、12月号で通算150号を迎えた。同市矢川の元会社員、山村準さん(85)が約12年にわたって執筆し、対策に取り組む名張鳥獣害問題連絡会が発行に協力してきた。人間による環境改変の問題や野生動物との関係のあり方を考えさせる手作りの活動だ。
山村さんは2006年ごろ、県内に拠点を置いて発信器を付けたサルの行動を追跡しているNPO法人「サルどこネット」が、市民にサルの位置情報を提供しているのを知った。地元でもサルによる作物被害が目立っており、山村さんもネットに登録して情報の受信を始めた。
NPOの狙いは、サルの群れの動きを把握して地域の追い払い活動などで被害を防ぐこと。だが、認知度は低く、山村さんは地域に情報を広めようとNPOの紹介や獣害防止策などをA4判の紙に書き、近所の家数軒に配った。これが新聞の始まりになった。
獣害の拡大を受けて11年に発足した名張鳥獣害問題連絡会に参加すると、会の支援を受けて印刷部数を増やし、他の地域への配布も始めた。現在はA3判の表裏に記事を載せ、約1500部に。国津やつつじが丘、比奈知など被害の多い地区を中心に無料で配布、回覧されている。
記事の内容は、名張周辺を行動域とする二つのサルの群れの出没状況と被害対策をはじめ、シカの異常増殖と被害の実態、イノシシ被害を防ぐ田の管理法、電気防護柵の問題点と適切な使用法、鳥獣のエサ不足を招くナラ枯れの問題……と多岐にわたる。
今年8月号では、つつじが丘の団地に現れた単独行動する「ハナレザル」を特集。連絡会会員で十数年前からサルの追跡を続ける古川高志さん(77)が確認した、女性への抱きつきや建物への侵入など数十件に及ぶ被害をマップや写真で紹介し、住民が結集した対策の必要性を呼びかけ反響を呼んだ。
獣害増加の背景の考察に力を入…