愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」。絶滅の恐れがあるオオタカの営巣が確認され、保護を求める大規模な活動が起きた結果、2005(平成17)年の愛知万博の主会場から変更された。市民が守った、万博の象徴と言える森のいまは。
NPOが保全、伝承活動
希少な植物が残り、鳥が舞う。大規模開発を免れた里山は、多くの動植物が生き続ける自然の宝庫として残った。
2005(平成17)年に開催された愛知万博「瀬戸会場」だった愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」。森を管理する「あいち海上の森センター」によると、豊かな自然を体験しようと、今も毎年約10万人が足を運ぶ。自然観察会や散策のほか、起伏を利用して森の中を走る「トレイルランニング」をする人たちという。
「正月には家の前に砂で階段の絵を描いて、門松や鏡餅を飾り、神様をお迎えするんです」
NPO法人「海上の森の会」理事長の石川明博さん(70)は、森を訪れる人たちに、海上地区に伝わる風習を説明している。万博の前年に会が設立され、現在の会員は約150人。海上の森を保全し、身近な里山の食や歴史、文化を伝える活動を続けてきた。
今、海上地区に住むのは2人だ…