北京市郊外で11月23日、アフリカ豚コレラが発生した地域で自動車を消毒する作業員=AP
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世界最大の豚肉の生産・消費国である中国で、治療法がない豚の伝染病「アフリカ豚(とん)コレラ」(ASF)が猛威をふるっている。8月にアジアで初の感染が中国で確認されて以来、中国政府は厳戒態勢で根絶をめざすが、感染は21省市に拡大。人には感染しないが、家畜への影響は大きく、これまでに60万頭以上の豚が殺処分された。日本政府も水際まで迫るウイルスを防ぐのに懸命だ。(瀋陽=平井良和)
遼寧省瀋陽市の中心部から約30キロ離れた瀋北新区の農村地帯。11月下旬に訪れると、農家の入り口のところどころに白い薬剤をまいた跡があり、多くの「消毒殺菌」と書いた袋が転がっていた。
この地域の養豚場で8月3日、アジアで初のASFウイルスが検出された。発生源から半径3キロ以内の農場では約8千頭の豚が殺処分された。複数の養豚場が取り壊され、付近の住民は「今も毎日のように消毒薬がまかれている」と話す。
徐輝さんの養豚場では豚がいたスペースに消毒剤をまいた跡が残っていた=11月27日、中国・瀋陽市瀋北新区、平井良和撮影
強い拡散力、人には感染しない
国連食糧農業機関によると、ASFは豚やイノシシの間で直接接触やダニの媒介によって感染し、発熱などを引き起こす。人には感染しない。岐阜県で今年に発生した豚コレラとは別の病気で、拡散力が強い。かつてはアフリカが主な発生地だったが、07年以降に欧州で急速に広がり、被害は40カ国を超えた。ワクチンや治療法がなく、感染した豚の致死率は100%に近い。
「アフリカ豚コレラ」を巡っては、ネットで悪質なデマも拡散。中国政府が火消しに追われています。そして日本も、迫る脅威に厳戒態勢を敷いています。新たな伝染病に揺れる最前線を取材しました。
瀋北新区に住む徐輝さん(36…