自動車業界の労働組合でつくる自動車総連(組合員約78万人)が13日、2019年春闘に向けた統一要求で賃金体系全体を引き上げるベースアップ(ベア)額を明示しない方針案を発表した。18年の春闘では、相場の牽引(けんいん)役だったトヨタ自動車が妥結したベア額を公表せず、トヨタの労組もこれを受け入れた。この動きを黙認した格好だ。
自動車総連は過去3年連続で「月3千円以上」のベアを求めてきたが、来春闘では額を明示しない。ベアの要求自体は掲げ続けるが、大手企業と中小企業が同じベア額を実現しても賃金格差が縮まらないため、具体的な目標水準の設定は各労組にゆだね、格差改善を図る狙いがあるという。
各労組が参考にする要求の目安として、賃金の高低や従業員の年齢に応じた目標月額賃金を10種類(21万5千円~37万円)提示した。
ベア額をめぐっては、トヨタ自動車が18年の春闘でベア額を公表せず、トヨタ労組もこの回答方法を受け入れたため、自動車総連としてトヨタを含めたベア要求の実現度を検証できなくなった。トヨタは来春以降も非公表を続けるとみられ、他企業にもこうした動きが広がらないか懸念されている。こうした中、自動車総連が来年の春闘に向けて、どのような方針を打ち出すかが注目されていた。
ただ、自動車総連の金子晃浩事務局長は13日、報道陣にトヨタのベア非公表が影響したのかと問われ、「そうではない」と否定した。方針案は来年1月の中央委員会で正式に決める。(滝沢卓)