相次ぐニセ電話詐欺の被害を防ごうと、呼び出し音が鳴る前に「録音」していることを伝えた上で、実際に通話を録音する装置を貸し出す取り組みが、茨城県内で始まっている。これまでは金融機関で従業員が声かけする「水際対策」に力を入れていたが、不審な電話そのものをなくすことが狙いという。録音装置の効果は――。
「あなたのクレジットカードで女性が貴金属を買いました」
昨年11月中旬の正午ごろ、土浦市の主婦(78)は、商業施設の担当者を名乗る男から電話でそう告げられた。カードを家族に貸した覚えも、落とした記憶もない。「詐欺の電話だ」と思ったが、不安な気持ちもよぎり、とっさに財布の中を確認してしまった。
10分後、「その女性を捕まえて警察を呼んでいる」と再び男から電話があったが、その時には落ち着いていたので、焦らず「(女性に)うんと(文句を)言ってやって」と返すと、信じていないことが伝わったのか、それ以降電話はなかったという。
女性宅には、3年前にも不審な勧誘電話があった。夫と2人暮らしで、日中自宅の固定電話をとるのはほとんど自分。これ以上、不審な電話に惑わされたくないと、今年9月、土浦市から録音装置を借りた。「それ以来、不審な電話はかかってきていない。装置をつなげるだけで安心感がある」と話した。
ニセ電話詐欺の被害防止に自動録音が効果的かどうか検証するため、県は昨年度と今年度、装置400台を購入。希望する各市町村に貸し出している。県生活文化課などによると、すでに土浦市とつくばみらい市、かすみがうら市で導入された。水戸、ひたちなかの両市も来年1月から貸し出しを始める予定だ。
装置は固定電話に外付けして使う。呼び出し音が鳴る前に「会話内容が自動録音されます」と相手側に警告メッセージが流れるため、会話を録音されたくない相手は、その段階で電話を切る。県警によると、会話が続いて録音した場合も、高音質のため声紋鑑定で証拠にできる可能性もあるという。
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