脳梗塞(こうそく)の損傷部に新しい神経細胞が移動できるように促すと、運動機能が回復することを、名古屋市立大の澤本和延教授(神経再生医学)らの研究グループがマウスの実験で明らかにした。脳梗塞の治療法の開発につながる可能性がある。13日、米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表する。
神経細胞はいったん傷つくとほとんど再生せず、脳梗塞が起きると、手足のまひなどを引き起こし、根本的な治療法がない。
澤本教授らの研究グループは、人工的に脳梗塞にしたマウスの脳を分析。新たにできた神経細胞が損傷部へ移動できず、神経機能が十分に改善しないことに着目した。アストロサイトという細胞が肥大化し、神経細胞の移動を妨げていることを突き止めた。
神経細胞が特定のたんぱく質を多く分泌できるようにしてマウスの脳に移植すると、アストロサイトが形を変え、神経細胞がすり抜けやすくなった。マウスは1カ月後、足を引きずらずに歩けるなど運動機能を回復した。
澤本教授は「神経細胞を増やす技術と組み合わせることで、ヒトの治療に応用できる可能性がある」と話している。(西川迅)