ユネスコの世界記憶遺産に作品が登録された福岡・筑豊の炭鉱記録画家、山本作兵衛(1892~1984)の水彩画2点が福岡県飯塚市の民家で見つかった。炭鉱で働くヤマの男たちの豪快さや、酒や米を取り扱う商店の営みを、ユーモアを交えながら伝える貴重な記録画だ。
作兵衛の作品の著作権を管理する事務所の代表で、孫の緒方恵美さん(57)は「筆跡や押されているはんこから、祖父の作品に間違いない」と話す。
2点は今年11月、武富慈海(じかい)さん(70)宅で見つかった。段ボールの中で、いずれも縦37センチ、横52センチの作品が額に入っていた。
「明治中期 筑豊 ヤマの独身者」と題した作品は、宿舎で一息つく男たちを描写。読書をしたり、寝床に入ったりする労働者がいる一方で、いろりを囲んで酒を飲む入れ墨の男たちの姿もある。「永げぇ浮世に短けぇ命」「あるだけ金を使うのがヤマ人のクセ」と書かれている。
作品「ヤマの売店」は、米や酒を量り売りする炭鉱の売店の様子を描いている。値段について「会社直営なれど市価より安くなかった」。「桝さばきに妙技を振う番頭がおって……」と、商品を少なく盛る店員がいたことをおもしろおかしく紹介している。
画用紙の裏にはいずれも数字が…