社会問題に取り組む市民運動を表彰しようと、九州で活動する市民団体関係者が「『プロ市民』人権賞」を創設した。「プロ市民」という言葉は、市民運動を批判する文脈でしばしば使われる。だが、主催者はあえて賞の名前に冠することを決め、初めての表彰式を15日に福岡市内で開いた。
受賞したのは、反戦や反原発を訴え、街頭活動などを続ける「草の根の会」(大分県中津市)。反権力・反公害の立場から執筆活動を続けた故・松下竜一さんの遺志を継いでいる。代表の梶原得三郎さん(81)は「賞に励まされて弾みがつけば、また誰かを励ます力になる」と話した。表彰式では賞金10万円と副賞のオリジナルTシャツが贈られ、ダンスやコントも披露された。
「プロ市民」という言葉は1990年代、佐賀県鹿島市長だった桑原允彦(まさひこ)氏が「地域の問題に主体的に取り組む自覚や責任感を持つ人」という意味で使い始めたとされる。だが2000年代に入り、「一般市民を装う営利目的の活動家」といった趣旨のネットスラングとして使われ始めた。
賞の名前を付けたのは、主催団体メンバーでイラストレーターのいのうえしんぢさん(48)。「揶揄(やゆ)する意味で使われる言葉を逆手に取りたかった」と言う。賞の名称に対して、市民運動家から「なぜ、そんな名前にしたんだ」といった批判もあったが、「それでも『猫だまし』のように振り返る人がいたら大正解。草の根的に活動する人を『プロ市民』とあえて呼ぶことで、概念が元通りになれば」。そんな願いを込めたという。(合田純奈)