現在から過去、はたまた地獄まで。史実と創作を織り交ぜながら、壮大な物語が繰り広げられる。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)=京都市中京区=の「田村友一郎『叫び声/Hell Scream』」は、美術家の田村友一郎(1977年生まれ)が、日本画家・田能村直入(たのむらちょくにゅう)(1814~1907)を題材に、この大学の芸術資料館が収蔵する作品の演出を試みた展覧会だ。
直入は大学の前身・京都府画学校の創立者の一人で、煎茶の普及にも努めた。「小虎」を通称としたことから、今展では直入を「虎」になぞらえて展示を展開している。
昔ながらの京町家の門構えから始まり、奥へ進むと、四角いおりのなかに茶道具が並ぶ。おりは直入が晩年を過ごした「画神堂」の一室の寸法に合わせてつくられ、茶道具は直入の旧蔵品だ。
2階には「地獄変」と題したアルミ板の屛風(びょうぶ)が展示されている。左端には直入の、右端には直入と親しかった富岡鉄斎の顔が描かれ、中央に近づくにつれて2人の顔が合成されて重なり合う。直入の死後、鉄斎が、地獄で絵を描く直入の姿を描いたことから田村が着想し、大学出身の画家・新平誠洙(にいひらせいしゅ)に制作を依頼した。
ほかにも細部に直入や京都にまつわる逸話がちりばめられている。
8月19日まで。月曜休館、入場無料。ギャラリー(075・253・1509)。(松本紗知)