松枯れを引き起こすのにかかわる「マツノマダラカミキリ」を駆除する新たな方法を、森林総合研究所(茨城県つくば市)などのグループが開発した。鳥や動物などの天敵が歩く時の振動をまねて松の幹を揺らすと逃げ出すという。殺虫剤を使わない環境に優しい方法だ。
研究所の高梨琢磨・主任研究員によると、マツノマダラカミキリは1秒間に100回程度の振動にとても敏感だという。6本の足の太ももに木から伝わってくる振動を感じる感覚器官があり、天敵のキツツキなどが近づくと感じる。
研究チームは数年前から、この振動を与える円筒形の装置(直径約5センチ、長さ約20センチ)を国内メーカーと開発してきた。松の幹にベルトをつけ、カミキリ10匹の様子を調べた。
2時間後、装置を取り付けなかった幹にはカミキリはそのままいたが、取り付けた幹では平均4割が逃げた。また、松の丸太に一晩メス6匹をつけたところ、振動を与えなかった丸太には産卵したが、振動を与えると全く産卵しなかった。
カミキリが松の樹皮を食べると、そこからカミキリ体内にいた線虫が侵入し、根からの水を通す管を詰まらせて松枯れが起きる。被害は全国に広がっている。殺虫剤でカミキリを駆除する対策が主流だが、環境への影響が心配されている。
高梨さんは「松1本に装置1個で十分な効果があり、市街地の公園などでも安心して使える。数年以内に安価で小型な装置を実用化させたい」と話す。振動による駆除法はトマトの害虫「コナジラミ」などにも効くとみて、開発を進めている。(三嶋伸一)