1周約5キロ、人口約1900人の観光と漁業の島、愛知県南知多町の日間賀島(ひまかじま)で、ヤギが環境保全のシンボルになっている。除草剤を使わず、伸びてくる草をヤギたちに食べさせ、やぶに埋もれた公園を約20年ぶりに再生。島の人たちはヤギをきっかけに、島の経済を支える海の環境問題にも視野を広げ始めている。
10月25日の夕方、日間賀島緑地公園(通称・タコ公園)で、9月以降に飼い始めた雌のヤギ6匹のお披露目会があった。宿泊施設を営む実行委員長の鈴川忍さん(47)は「島を出た子どもたちが帰りたいと思える潤いのある島にしたい。子や孫の代まで見すえたプロジェクト。除草剤はやめてほしい」と訴えた。「島庭プロジェクト」と銘打ち、実行委員会には島の観光協会や漁協などが参加しており、全島規模の活動だ。
きっかけは1、2年前。観光協会長の鈴木安博さん(48)と、庭師として島に出入りする愛知県一宮市の古川乾提(けんじ)さん(46)が「島のために何かやろう」と話したことだ。古川さんは人の手が入らずに、やぶになった林が島で増えていることが気になっていた。「やぶを刈れば、光が差し込み、風が通る。植物の多様性が増し、土の栄養も高くなる」
手始めに目を付けたのが、約5千平方メートルあるタコ公園。町が1990年に完成させたが、20年ほど前から、つる性の草やヨシ、シュロなどが生い茂り、入り口も分からなくなっていた。「やぶを刈った公園で、ヤギに草を食べさせて除草する。フンは土の栄養分にもなる。やぶを減らせば、自然の循環で海にも栄養が流れ込み、魚も増えてくるはずだ」と呼びかけると、漁師たちも関心を示すようになったという。
プロジェクトは4月に発足。島の人たちが公園のやぶを少しずつ刈り進めた。ヤギがやって来ると、子どもや親子連れらが毎日のように集まり、自分たちが持ち込んだ草などを食べさせている。2歳の孫を連れてきた近くの宮地真弓さん(63)は「孫はヤギをなでなでしたり、葉っぱを与えたり、すっかりお気に入り」とほほえむ。
ヤギたちは、港周辺の緑地など…