日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長が取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという特別な決議をさせていたことが、関係者への取材でわかった。一般的なルールを装ったこの決議で、自らの報酬の投資で生じた損失を、他の取締役には隠したまま付け替えたとみられる。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
東京地検特捜部などによると、ゴーン前会長は2006年以降、自身の資産管理会社と新生銀行の間で、金融派生商品であるスワップ取引を契約。前会長が「日本円で受け取った報酬をドル建てにするため」と説明するこの契約で、08年秋のリーマン・ショック前後に、円高による多額の評価損が発生した。ゴーン前会長は同年10月、契約の権利を資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損の負担義務を日産に負わせた疑いがある。
関係者によると、銀行側は、日産の取締役会で権利移転の承認を得るよう求めた。だがゴーン前会長は、他の取締役には損失を隠したまま、付け替える方法を検討。「円建てで報酬を得ている全ての外国人取締役の利便を図るため」として、外貨に換える投資を行う際の権限を、秘書室幹部に与えるという議案を取締役会に諮った。銀行側は、評価損が出ている前会長の契約の権利移転を具体的に議案に盛り込んだり、少なくとも口頭で説明したりするよう求めたが、前会長側は拒否。議案はそのまま議決されたという。
ゴーン前会長は、この権利を再…