日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えて損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された事件で、損失の付け替えを日産の取締役会で承認するよう求めた銀行側の要請を、前会長と側近の秘書室幹部が再三にわたって拒否していたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部もこの経緯を把握。秘書室幹部から詳しい供述を得ているとみられる。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
損失の付け替えをめぐっては、ゴーン前会長が秘書室幹部を銀行との交渉役に指名していたことがすでに判明している。この幹部は、役員報酬の過少記載事件で特捜部と司法取引に合意している人物だ。前会長がごく一部の側近に指示したうえで、取締役会の承認も避けていたことから、特捜部は自らの利益のために付け替えを隠す意図があったとみている模様だ。
関係者によると、ゴーン前会長は損失を日産に付け替えたことは認めたうえで、「実損は生じていない」などとして容疑を否認している。
ゴーン前会長は、自らの資産管理会社と銀行との間で金融派生商品であるスワップ取引を契約していたが、2008年秋のリーマン・ショック前後に多額の評価損が発生。同年10月、契約の権利を資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損などの負担義務を日産に負わせた疑いがある。
関係者によると、銀行側は権利を日産に移すためには、取締役会で承認を得ることが必要と判断。交渉役に指名されていた秘書室幹部に対して、取引の具体的な内容を取締役会の議案に入れるよう要請した。だがゴーン前会長の意向を受けた秘書室幹部は「個別の案件や役員名を入れることはできない」と拒否。銀行側から、ゴーン前会長の名前を出さない形で議案に入れられないか再度求められたが、これも拒んだという。
銀行側は最終的に、日産が大企…