小学生は1カ月でツキノワグマ1頭分の荷物を運んでいる――。そんな調査をした福岡市の小学生が、統計グラフのコンクールで文部科学大臣賞を受賞した。
福岡市西区の愛宕小2年、江見一夏(えみいちか)さん(8)。夏休み前、暑い中を登校しながら「この荷物、どのくらい重いんだろう」と考えた。体重計や計りを使い、ランドセルや水筒、教科ごとの教科書やノート、体操服などの重さを量り、6月5日~7月2日の時間割を見ながら、毎日の重さを電卓で計算した。
最も重い日は6220グラムで、軽い日でも4190グラムあった。1カ月(20日間)を足すと96キロあまりに。曜日別にグラフにすると月曜が一番重く、次いで火、金の順だとわかった。
B2判の紙にグラフや絵でまとめ、「1日でスイカ一こ分のおもさ」「一週間でコウテイペンギン1ぴき」「一か月でツキノワグマ一頭をはこんでいる」と表現。「思っていた通り一週間の中では月曜日が一ばんおもい」「かえりの分をしらべたら、金曜日が一ばんになるかもしれない」と記した。
第66回統計グラフ全国コンクール(統計情報研究開発センター主催)に出すと、全国応募数2万7594点の中から、特選の文科大臣賞に輝いた。11月19日に東京で表彰式があり、審査委員長から「実態をきちんと計測し、工夫されたグラフで分かりやすくまとめた。数字を伝える力も見事」と絶賛された。
江見さんは「調べてみて、やっぱり小学校の荷物は重たいと思った。学校の授業はタブレット(端末)にしてくれたら」。父の直之輔さん(35)は「こんなに荷物が重かったんだと、娘に教えられた。何らかの解決策を大人が示さなればいけないのでは」と話した。(渡辺純子)
教頭「最大限工夫してこの状態」
小中学生の荷物は近年、「脱ゆとり教育」で教科書のページ数が増えたことなどにより、重くなっている。「身体の健やかな発達に影響が生じかねない」として文部科学省は9月、重さに配慮するよう全国の教育委員会などに通知。「書写の授業後、汚れた筆は持ち帰るが、他の用具は学校に置いておく」などの事例も紹介した。
福岡市教委も昨年度、荷物軽減の検討委を設置し、教科書を学校に置いておく「置き勉」を一部認めるなど改善を進めている。
江見さんの通う小学校も1年以上前から、絵の具や習字道具は学校に置いておくなどの改善に取り組んでいる。教頭は「最大限工夫してこの状態。家での予習復習も大切」と悩む。
小中学生の荷物の重さに詳しい白土健・大正大教授(経営学)は「改善されてきたとはいえ、1日5キロは2年生にはまだ重い。体重の15%を超えると発達に影響しかねないという医師もいる。各校の工夫事例を集め、例えば『置き勉をしても成績は下がらない』などが分かってくれば、さらに改善できるのではないか」と話している。