「子どもロコモ」という言葉を、知っていますか? 片足立ちができなかったり、しゃがみ込みができなかったり。そんな子どもたちが少なくないことが、明らかになってきました。どんな背景があるのでしょうか。そして、その対策は――。
埼玉県の男子高校生(17)は中学2年のとき、学校の健康診断で、背骨が左右に曲がる「側彎(そくわん)症」の疑いがあると指摘された。近くの整形外科を受診。「程度は軽い」と言われ、経過観察になった。
小学生のころから、前屈で手が足先に届かず、体が硬いという自覚があった。別の整形外科で調べると、手を使わずにしゃがんで立つ動作ができなかった。
体が硬かったり、バランスが悪かったりする状態を「子どもロコモ」と呼び始めたのは、北本整形外科(埼玉県北本市)院長の柴田輝明さん。30年以上の診療経験から「けがをする子は繰り返す」ことが気になっていたという。
体が硬いと関節が十分に曲がらず、けがのリスクが高まる。県医師会で学校保健を担当していた2007年、通常の健康診断に加え、体の柔軟性を調べる「運動器検診」を全国に先駆けて始めた。
当初はスポーツ障害をもつ子どもを見つけたいと考えていた。しかし始めてみると、「姿勢や歩き方が悪い子がたくさんいて驚いた」。主に中高年を対象に、足腰が衰え、自分の足で移動する力が低下した状態をさす「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」から名前をつけ、対策につなげるために活動を始めた。
柴田さんやNPO法人「全国ストップ・ザ・ロコモ協議会」は、①片足立ちがふらつかず5秒以上できない②かかとを地面につけたまましゃがみ込みができない③肩が垂直に上がらない④ひざを伸ばしたまま体を前にかがめて手の指が床につかない――の4項目のうち、一つでも当てはまれば、子どもロコモの疑いがあるとしている。
宮崎大の帖佐(ちょうさ)悦男教授(整形外科)は、宮崎県内の小中学生約8500人を調べた。「しゃがみ込みができない」「肩が上がらない」など、軽いものも含めると、約20%の子どもで問題があった。帖佐さんは「このまま大人になると運動器(骨や筋肉、関節など)の病気になりかねない。子どものころから対策が重要だ」と話す。
過去の統計がなく、子どもロコモが増えたのかは、はっきりしないという。だが、文部科学省の調査によると、子どもの運動習慣は、「積極的に運動する」と「ほとんどしない」の「二極化」が進む。
これらは、クラブ活動など同じスポーツで特定の筋肉や関節ばかりを使ったり、ゲームで同じ姿勢を続けたりすることにつながり、「どちらも子どもロコモやけがのリスクを高める」と北本整形外科の柴田さんは指摘。「全身を使う外遊びができる環境づくりが必要」と語る。
子どもロコモかどうかは、自宅…