中国・南方科技大の副教授が受精卵の遺伝子をゲノム編集で改変し、双子を誕生させたとされる問題で、日本哲学会と日本倫理学会、日本宗教学会は25日、「人類全体の未来に関わる重い倫理的問題だ」などとする共同声明を出した。人文系の3学会がゲノム編集について声明を出すのは初めてという。
声明は「遺伝子改変(の影響)は世代を超えて子孫に伝わり、種を変える始まりになりかねない」と指摘。精子や卵子、受精卵のゲノム編集を容易に行えるなか、「合意形成のプロセスを経ずに行われるのは決して許容できない」とした。
そのうえで、遺伝子を改変した受精卵による妊娠への法的規制を本格的に検討する必要があるとして、「市民とともにゲノム編集やいのちへの介入の倫理問題について考え、社会的合意を得る必要がある」としている。
記者会見した日本宗教学会理事の島薗進・上智大教授は、「(受精卵の遺伝子改変は)優生学的な変化をもたらしうる」と述べた。改変された人とそうでない人が共存し、連帯感の欠如や差別が懸念されるとした。(福地慶太郎)