「感情」は私だけのもの、のはずだが――。その感情が意図的に外部から揺さぶられてしまう。人工知能(AI)技術の発展などに伴い、そんな性質をうまく利用しようとする動きがビジネスや政治の世界などで広まっている。そもそも感情とは何なのか、本当に思いのまま動かされてしまうのか。日本感情心理学会理事長の中村真・宇都宮大教授に聞いた。
観客の心を読むAI、新曲は「喜び」 操られる私の感動
――人間の持つ感情はいつから備わり、その性質はどう変化を遂げてきているのでしょうか。
「一般的に、人間など哺乳類にはもとから備わっていると考えられています。その考えのベースになっているのが、ダーウィンが表情の機能について論じた『人間と動物における情動の表現』(1872年)という本です。世界中で表情について調査したデータから、感情は言語のように生後に獲得されるものではなく、生まれながらに持っているものだということを示しました」
――その感情にはどんな種類があるのでしょうか。
「色々な心理学の立場により異なりますが、有名なのは米心理学者ポール・エクマンの6~7種類という説です。『怒り』『悲しみ』『驚き』『恐れ』『喜び』『嫌悪』『軽蔑』に分けられます」
――犬は尻尾を振るなど感情表…