タイの軍事政権と親軍政政党が、対立するタクシン元首相派の支持基盤である農村や貧困層の住民を取り込む姿勢を強めている。民政移管に向けた総選挙は先延ばしされる可能性が高まっており、民主活動家などからは「先延ばしは支持を伸ばすための時間稼ぎ」との批判が出ている。
プラユット暫定首相は14~15日に北部チェンマイ県とランパン県を訪問。ランパンで15日に開いた移動閣議に伴うものだが、タクシン氏の出身地チェンマイ県や隣のランパン県はタクシン派の強固な地盤だ。
地元メディアによると、プラユット氏はチェンマイ県での演説で「国に損害を与えた人たちの言うことは聞くな」と発言。タクシン氏の妹のインラック前首相が、コメ政策で国家財政に損失を与えたとして有罪判決を受けたことを指すとみられる。
軍政の現職閣僚が党首を務める「国民国家の力党」もタクシン派の地盤で相次いで集会を開くなど、活動を活発化させている。
タクシン派は低所得層への手厚い政策で北部や東北部の農村、都市の貧困層に絶大な人気がある。2014年5月のクーデターで政権を覆されたが、同派のタイ貢献党の支持率は世論調査で首位を走る。
そこにくさびを打ち込むように、軍政は低所得層向けの施策も相次いで打ち出した。「新年の贈り物」として昨年末に一律500バーツ(約1700円)を支給し、電気代や水道代も今年9月まで軽減。反軍政派は「選挙目当てのばらまき」と批判する。
親軍政勢力は選挙後、プラユッ…