堺市南区で昨年7月、大型バイクに「あおり運転」の末に追突してバイクの男性を死亡させたとして殺人罪に問われた被告の男に対する大阪地裁堺支部(安永武央裁判長)の裁判員裁判は17日、検察側が懲役18年を求刑した。一方、被告側は事故は「過失」と訴えて結審。遺族は会見で悲痛な思いを訴えた。判決は25日。
「一生許せぬ」息子失った母が涙の訴え あおり運転公判
検察側は論告で、同区の元警備員の中村精寛(あきひろ)被告(40)が昨年7月2日夜に車を運転中、大学4年の高田拓海さん(当時22)=同市西区=運転の大型バイクに前に入られたことに立腹して猛スピードで追跡し、回避も試みずに故意に衝突したと主張。「まれにみる殺人運転で、あおり運転や交通トラブルが後を絶たない中、厳しい処罰を社会が求めている」などと求刑の理由を述べた。
一方、弁護側は最終弁論で、被告が車のライトをハイビームにするなどしたのは、バイクが前方に入って「危険を感じたから」と反論。妻を迎えに行くために車線変更したところ、被害者が前方に見えてブレーキをかけたが間に合わずに衝突したとして、改めてあおり運転や殺意を否定した。最後に中村被告は「尊い命を奪ってしまったことに対し反省し、謝罪したいと思います。誠に申し訳ございませんでした」と述べた。
この日の公判では被害者遺族の意見陳述もあり、高田さんの母親(45)は「拓海の命を自分勝手な行動で奪った被告を一生許すことなどできない」と涙ながらに訴えた。
閉廷後、遺族が会見。高田さんの叔父忠弘さん(42)は法廷で再生された被告の車のドライブレコーダーの映像を踏まえ「拓海は(事件の)きっかけすら作っていなかった」と強調。「あおり運転自体、相手が死ぬかもしれない殺人未遂(行為)になると世間に知らしめられたら」と訴えた。
高田さんの妹(21)は「怖かっただろうなと思う。(被告の車の)クラクションの音から必死に逃げていくバイクの音、最後のぶつかる音までずっと頭から離れない」と声を震わせた。(坂東慎一郎、畑宗太郎)