堺市南区の大阪府道で昨年7月、大型バイクに「あおり運転」をした末、車で追突してバイクの男性を死亡させたとして殺人罪に問われた同区の元警備員、中村精寛(あきひろ)被告(40)の裁判員裁判で、被告人質問が16日、大阪地裁堺支部(安永武央裁判長)で始まった。被告は運転前にビールを飲んだと述べた。
あおり運転、被告が語った「取り返しつかない」 妻証言
検察側は、被告が昨年7月2日夜、大学4年の高田拓海さん(当時22)=同市西区=運転のバイクに自車前方に入られたことに立腹して追跡し、故意にバイクに追突して高田さんを殺害したと主張。一方、弁護側は被告はバイクに腹を立てたことはなく、前方に現れたバイクにブレーキが間に合わず衝突したと殺意を否定し、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)罪にとどまると主張している。
この日の公判で、被告は当日午後6時ごろに仕事を終えて会社近くの立ち飲み屋で生ビール2杯を飲み、午後7時10分ごろに妻を勤務先まで迎えに行くため、会社の駐車場に止めていた車で出発したと述べた。
被告人質問に先立って被告の妻の証人尋問もあり、妻は逮捕・勾留された被告と面会した際、被告が「取り返しがつかないことをした。申し訳ない」と話したと証言。被告の日常の運転について「少し危ない面があり、ブレーキを踏むのが遅い癖があったと思う」と述べた。
検察側が、「被告が衝突前に車線変更したのはバイクの追跡のためではなく、妻と食事に行くことにしたため」とする弁護側主張について、普段のように被告から迎えに行くと連絡があったか尋ねると、妻は「なかった」と述べた。(坂東慎一郎、多鹿ちなみ)