2017年10月に大阪府阪南市で南海電鉄の列車が沈下した橋の上で脱線し5人がけがをした事故で、国の運輸安全委員会は31日、調査報告書を公表した。橋脚の土台を保護する「根固め工」が損傷し、川の流れで橋脚周辺の河床がえぐられる「洗掘」が起こり、橋が沈下した可能性が高いと指摘。南海は事故の5年前に損傷を把握していたが、危険性を認識できなかったという。
事故は台風が接近しているさなかに起きた。報告書によると、乗客約250人が乗る列車が時速約70キロで橋に入った際、運転士が約50メートル先に線路の沈み込みを見つけて急ブレーキをかけたが間に合わず、脱線して約250メートル先で止まった。沈み込んだ橋脚付近は、増水で洗掘が起きていた。
洗掘のあった橋脚の根固め工は、以前からコンクリートなどがえぐり取られている状態だった。12年に近隣住民から損傷があるとの通報を受け、南海は衝撃振動試験を実施したが、橋脚の安全性に問題はないと結論づけ、増水時の洗掘対策はしなかった。
報告書は、根固め工の補修をしていれば、洗掘を防げた可能性が高いと指摘。安全委は橋脚の検査に際し、洗掘対策の必要性を判断するチェックリストの使用などを全国の鉄道会社に求めるよう、国土交通相に意見を出した。(贄川俊)